沖野俊太郎自ら、先日発売になったリミックス・アルバム『Too Far』(F-A-R Remixes)に参加していただいたリミキサーの方々にインタビューしてみようじゃないの? 沖野にしか聞けない事もあるんじゃないの? と云う企画の第一弾。
沖野与田さんはもう、ねぇ「Welcome To My World」が好きだって初めっから言ってて。割とやっぱ90年代当時を意識した?
与田うん、インディー・ダンスにしたかったの。俺もう今、単純な4つ打ちのハウスとかトランスがフォーマットの音楽になっちゃっててあまり興味がなくて。だからウェザオールとかテリー・ファーレー、オークンフォールドもそうだけどロックバンドのリミックスをやってる時代ってフォーマットがないからみんなスタイルがバラバラじゃん?BPMも遅かったり早かったり自由にやってるし。その雰囲気でやりたいなって思ってホントはチャプターハウスの「Pearl」みたいな感じにしようと思ったんだけど、やっててこれちょっと違うってなって。Ulrich Schnaussっていうドイツのクリエイターがいるんだけどその人の「Nobody’s Home」って曲がものすごい良いんだけど「あ、この雰囲気にしよう」って。彼はシューゲイザー・シーンでも結構有名な人で。
小川来日した時前座やったよね。シュガープラントで。
与田バンドシーンと打ち込みのダンスシーンがクロスオーバーしてる感じ。で、インディーダンスもダンスとロックがクロスオーバーじゃん?そういう意味で違うフィールドを跨いだものにしたいって思ってって。
沖野なるほどー。
与田でもほんとに困ったのは4小節進行じゃないからね。
沖野うん、6小節。
与田で、それを踏襲しちゃうとチグハグな感じになるなぁ って思ってそこはもう編集して。石田さんのギターソロは生かしてるんだけど4小節パターンにして。
沖野6小節進行に違和感を感じるってところが与田さんらしいなって。俺は全く感じないから。
与田俺は自分で曲作ったりするとかじゃないし、基本、礒谷さんが全部作業するから。
小川やっぱ礒谷さんなのね。
与田この曲のビートの感じとシンセパッドのこういう綺麗な・・
小川いつもの音色でしょ?Ah Ah ってやつ。(笑)
与田そうそう。(笑)もうズラ~っていろんな音源の音を聴きながら「じゃあここはこの音」でハメてみたいな感じでやってて。
沖野Goldie方式っつーか?与田さんて鍵盤ができたりするわけではない?
与田全然できないできない。ギターは弾けるけどね。
沖野じゃあコードとか音を採ったのは礒谷さん?
与田コードはもう途中で変えようかと思ってもっと単調なものに。でもそうするとやっぱ歌の良さが生きないなと思って。
沖野メロがね。
与田で実はあれすごく複雑なコードじゃん?これちょっとベースラインを一から組むと難しいからって。
沖野それで初めは要らないって言ってたベースのファイルを送ってくれってなったのね。
与田そのエレキベースを加工してさらにサブベースを足してる。
沖野・小川ふむふむ。
与田Venus Peterの「Painted Ocean」のリミックスをやった時にアレ、自分でもすごい気に入ってってまさにインディー・ダンスなんだけどその方向より広がりのある感じの方が良いだろうってなって。
沖野俺ももっとインディー・ダンスで来るかと思ってたけど印象としてはCafe Del Marっぽい雰囲気もありつつ。
与田それは正しくて、Ulrich SchnaussってCafe Del Mar方面でもすごい人気ある。
沖野もとはシューゲイズっぽい曲でもあるからね。
与田とにかく元気な4つ打ちにあんまり興味が無いっていう。(笑)
沖野それってやっぱ年齢もあんのかな?
与田いや、フォーマットの音楽になりすぎてるんだよね。
小川フォーマットはほんとにデカイよね。
与田今ってAbleton Live!がすごい進化してるから、例えば10代の子が普通のハウス・トラックとか1時間でポーンと作れちゃうからね。その感じにももう飽き飽きしてるし。だから今のメインストリームのパーティーとは離れたいってのもあるし。
沖野ふむふむ。
小川あの曲(Welcome)良い曲だよね、他もいっぱいあるけどアルバムが素敵だからこのリミックス・アルバムもすげー聴いてる。
沖野ところでシュガープラントとして音源出したのって何年ぶり?
小川(笑)いやーそう言われるとー。
沖野『Dry Fruits』以来ではない?
小川1曲出したりとかちょいちょいあるけど・・・うーん
与田あのさぁ、E-2E4のトリビュートって何年?
小川2003年かな。
与田やっぱ10年位出してないんじゃない?
小川出してないかもね。
沖野去年さぁ、F-A-Rsも出た河口湖のフェスでシュガプラがやっぱすごい良くて。それでリミックス聴いてみたいなって。結局この人のリミックスを聴いてみたい って人に頼んでるんだよね。どうやるのかなっていう。
小川うんうん。
沖野で、10年以上も出してない理由っていうのはやっぱあったりするの?
小川・与田わっはっは(笑)
沖野やっぱりシュガープラントのインタビュー読みたい人も少なからずいると思うんだよね。そういう意味もあって、その10何年もさぁ・・・
小川うーん、そうねぇ・・。
沖野もちろんリタイヤしたイメージも全然無くて。
与田ライブは2008年からちょこちょこやってるもんね。
沖野まぁやっぱ家庭環境とか俺もその辺よく分かるというか・・。
小川たぶんなんか共感するとこが(笑)あるんだろうと思うけどもう一言じゃなかなか言えないんだよ~。
一同(笑)
小川なんなんだろう、なまけてるのかもしれないねー。(笑)
沖野あるレーベルからレコーディングの話もあったんだけど流れちゃった みたいなのは与田さんから聞いたけど。
小川そう、だから曲はできるんだけど3ヶ月位やる気出すとその辺でなんか出来ないものが出てきて。自分で呼び込んでるんじゃないかなぁ・・わかんないけど。
与田もう俺ははっきり友達として、シュガープラントのスタッフとして文句言うけどいくつかのレーベルから出しませんか?って言われて。で、デモ作ってくんのよ、小川くんが。
沖野デモは作るんだ?
与田そうそう、だけどホント「コレじゃダメだろう・・」って。
小川(笑)
与田で小川くんもそれわかってるからコレで行くって言わないもんね。
小川まぁでもその後コレをちゃんとやる、ってところでだいたい出来なくなっちゃう。
沖野そこからパワーが続かないの?
小川やってることに関しては別に落ち込んだりしてないんだけど・・なんか色々出来ないの。なんか知らないけど。(笑)
沖野じゃあミュージシャンとして壁にぶち当たって、失速してったってわけでもない?
小川まぁ 結果失速してるって言い方は全然あるんだけど(笑)本人としては音楽的行き詰まり ってのは全然ない、つもり。だけど・・・昼間仕事してるし・・
沖野そりゃもちろん重要だよ。
小川その辺のバランス的に音楽にさける時間がなかなか無いみたいなことになっていくんだけど・・本人は一番やりたいんですよ。なんなんだろ(笑)
沖野でもさぁ 与田さんに聞くと二人はここ最近まで踊ってたって。踊りには行ってたって。
小川うんうん。
沖野では音楽が遠くなったわけではない?
小川全然。
沖野なのに踊るってことは刺激も受けてて「あー、今こういうのがスゲエ、オレもこういうの取り入れて」みたいなのって我々ずっとあったじゃん?でもそこに至らなかったっていう?
小川だからアイデアだけは常に考えてる状態。
沖野相変わらずメモってる?小川くんのイメージってアルバム作るときにノートにすごいメモるっていう。それを具現化できなかった?
小川うんうん、で頭のなかではコレはコレで行こうって。でもスタジオ入る時間もないし。ドラムがいなくなったりとか・・そういうのとかで毎回振り回されるっていうか(笑)わかんない。あとまあ締め切りって大事じゃん?それがないから。
沖野俺もそうだった。
小川永遠探求しちゃうんだよね。でもっと言うなら別にコレいつ出すとか関係ねえじゃん?って感じになっちゃってるから・・。よくわかんないんだけど、なんだろ?リリースとか業界的なこう、何かのラインに乗るっていう感じも無くなってるんで。だとするとこれは何だろうって・・自問自答っていう・・。
沖野そういうのがあったと、葛藤というか。
小川うん。
沖野小川くんてさぁ、自分ではギタリストなの?それともソングライター?どういうバランスなのか?ってのは聞きたい。やっぱギタリストっていうイメージが強いしね。
小川自分の意識としては曲を作る人。
与田多分ギタリストってのが一番下だよね。っていうのは小川くん、練習しないんだもん。
沖野えっへっへ(笑)
与田でも弾けるからぁ、まぁプロデューサー・マインドだよね。
小川完全にそうだね。
沖野でもプロデューサーとソングライターってまた全然違うじゃない?例えば俺ってあまりプロデューサーっていう感じがないんだけど。小川くんはあるよね。
小川あー。
与田トラックメーカーっていうか、ダンスシーンから見たプロデューサー感覚?
小川うーん、どういうバンドだったらカッコいいか?ってことは考えるよ。この曲ギター要らないんだろう?って曲なのに「俺はギター弾きたいんだ」って言う自分は「お前何言ってんだ?!」って言うような位置関係なので。ギター弾いたほうが良いんだったらじゃぁ弾こうか、っていう。作品っていうものが一番上位にある。
沖野前にmidi使ってギターで全部変換して打ち込んでるみたいなこと言ってたよね?
小川うんうん、でも今はもうそれもやってなくて。
沖野じゃあもう鍵盤とかも弾いてるの?
小川今回のは人に頼んだんだけど、それなりに雰囲気だけは弾けるようにはなってる。シュガープラントってのはこうあってほしい、みたいのは常にあるかもしれない。
与田それはひとことで言うとプロデューサーってことだと思うけどね。
沖野うん。で、ここはちょっとカットかもしれないけどやっぱりちなっちゃん(vo,bass)との関係性もあって間空いたのかなって。
小川まぁまぁもう、全然そうでしょう。
沖野やっぱそうだよね。
与田実際3、4年やってなかったよね?解散状態だった?
沖野え?いつから関係は終わったんだっけ?
小川いつだぁ?
沖野『Dry Fruits』(sugar plant 3rdアルバム)のときはまだ?
小川アレは2000年だから・・あの時すでに終わりの予感は入ってるんだよね・・。
与田2003年くらいに別れてる?
小川そうかもしれない。
与田そうだよね。その2年後くらいに結婚してるよね。
小川かもしれない。
沖野そこはアレなの・・。
小川いいっす (笑)この話・・・したいな。ワハハ。
与田まぁ文字に起こしてから。
沖野俺も色々・・。
小川ユーリズミックス状態です。
沖野その辺ってやっぱりタブーなの?
小川いや、全然タブーじゃない。
沖野だって今はもうお互いふたりともそれぞれ結婚して、ねぇ。
与田全然タブーじゃないよね?
小川うん、でもやっぱりお互い前とは違うんですよね。
沖野いや、でも普通バンドってそこで終わっちゃうじゃん?そこが存続してるってのがやっぱすごいよね。
小川させてんのか、結局存続してんのかどうかってね。(笑)わかんないでしょ?ペースとして。
与田ライブはやってるけどぉ、みたいなね。
沖野やっぱりそこが一番大きかった?
小川まぁそれをどう捉えるかの話になってくるんだけど。でも例えばバンドとしてなんか行き詰ったんじゃないから、音楽として。音楽的に「この二人でやってってもダメだね」ってのはお互い全然無かった。だから、とするとなんかできるかもね っていうのでやってんの。
沖野すごいね~。そうなんだ。あとちなっちゃんってホラ、自分のソロをずっと淡々とやってるから、それがあるからってのもあったりするのかな?
小川なんだろね。
沖野やっぱシュガープラントって二人の関係性が濃厚に出てたし、二人の世界 みたいなとこで俺の中では終わってるからさぁ。ある意味ね。
小川うん、チェリッシュとか言われてたもん。古いけど。(笑)でも逆にこっちからはわからないことかも。
沖野でもトランス時代から全部二人で来てたじゃない?ゴア(インド)に行って小川くんがエライ変わって帰ってきたりさぁ。
与田(笑)ワイルドになってね。
小川でも別れたあとも一緒に遊びに行ってるの。*Life ForceとHouseのイベントとか。パートナーは違ってたりするんだけどずっと同じとこで遊んでるから。あとバンドに対する気持ちってのがお互い全然ブレない。
沖野とにかく音楽っていう軸がね。
小川プラスなんかもちろん、いろんなものがこう、見え隠れしてるっていう。そんな感じなんだけど。だからバンド辞めよう、っていう発想にはならなくて。
与田だからやり始めたんだろうね、2008年に。
小川そうそう、でもまたそっから何年も経ってるね・・びっくりしちゃった俺。
与田(笑)
沖野まぁそれだけ円満に別れたってこと?
小川ぜーんぜん違うんだよな・・。
与田ぜんぜん違うでしょアレ・・。
沖野だったらそれ・・・それで続くってのはやっぱりすごいなぁ。
与田いやでもそれだけお互いが作り上げてきたものがそれぞれにとって大事だったんじゃない?やっぱりほら、「Happy」とか「Trance Mellow」とか俺達がほんとパーティーの激流に飲まれたタイミングで作った作品だからその当時の思い出なしには聴けないし、近くにいた者にとってはあの当時を象徴する音楽になってる。
沖野なってるよねぇ。
与田それは本人たちも間違いないだろうし。
小川だからまだなにかできるぞ ってのは常にあるから。ぜんぜん今後も。
沖野良かったよねぇ。
小川不思議なもので。
与田俺は新作聴きたいけどね。
小川うん、だから・・出来ますよ。
与田(笑)
沖野INDIANSUMMERからどう?うちの社長、今回のリミックスでも一番シュガープラントがお気に入りだし。ライター北沢さんもエライ褒めてたし。
小川あれ、あんなに褒められてスッゴイ嬉しかったんですけど。あんな風にほめてくれるんだって。
沖野だからもう、やったほうがいい。
小川うん。
沖野やったほうがいい人がいっぱいいるんだよね。今回のリミックス・アルバム。
小川うん、すごい良かったっすよ。だから。あのさ、90年代ってもうなんか全員音楽に突っ込んで。それこそもう人生も「先は知らねえよ」っていうカタチで突っ込んだあとの生き様的な? でもキープしてかないと っていうかあのまま行っててもなかなか難しい でしょ?だから思ったのは当時は音楽しか考えてなかった。スネアの「パーンパーン」みたいのを一日中考えて「こっちかな?」みたいのをずっとやってたけど、コレだと社会じゃ通用しないな ってことを30歳くらいで思ったんで。
沖野社会 (笑)
小川ちょっと弱すぎるなって思って。音楽的に「俺はこっちのスネアがわかる」とかっていう話だとちょっと通じないじゃない?
与田(笑)生きてくにはそれだけじゃ足りない。
小川このままだと音楽ごと潰される感じもあって、自分の中で。だから多少、社会的に強くなりたいなって あったんですよ。そしたら今度、社会は強いから。(笑)そっちはそっちでクルし。でもそれは自分の望んでるバランスではあったんですよね。だけどほんとにまだこう、今回のもスゴイ楽しんで出来て、俺も気に入ってるから、やりゃイケるんですけどね。
沖野そうそうそう。
与田きっかけになったらいいよね。