‘Talk Too Far’ Vol.2 

Guest : Linn Mori

沖野俊太郎自ら、先日発売になったリミックス・アルバム『Too Far』(F-A-R Remixes)に参加していただいたリミキサーの方々にインタビューしてみようじゃないの? 沖野にしか聞けない事もあるんじゃないの? と云う企画の第二弾。

取材・文 沖野俊太郎
2016.08.24 UP

 好評企画第二弾。今回のゲストは『Too Far』の参加アーティストの中では唯一の20代、そして彼の作品「Swayed」Linn Mori Remixはアルバムにおいて唯一ほぼヴォーカル無しのインストで構成されており、そこに若さと潔さを感じさせてくれたlinn Mori。ビートメイカーとして国内外での高い評価も納得のセンスと才能は何処から来ているのか?Sound & Recording Magazine等で制作関連の話は聞けるが、彼の為人については謎。プロフィールにも記載されている「引きこもりだった」ことについてや彼の驚きの原点など、誰にも聞けない事柄について「ある意味対照的な男」である沖野が質問しまくった結果、そのダークサイドから浮かび上がった「現代の若者像のようなもの」は大変興味深く、どの年代が読んでも読み応えのあるものではないかと思う。それに加えて沖野自身、Hiphopの知識が非常に乏しくLinnくんとの対話によってその魅力に気づかされたりとまた新しい刺激や発見がありました。激しいジェネレーション・ギャップ?の中、良くぞここまでといった濃い~内容の長い長いインタビューに答えてくれた彼に深い感謝を。そして今回もあなたにとって何か新しい発見でもあったりしたら?幸いであります。



沖野linnくん、今いくつだっけ?

Mori今年26になります。1990年生まれです。

沖野俺の約半分ね。(笑)で、今までインタビューっていうと割と制作とか機材系の話が多かったかと思うんだけど。サンレコとか。

Moriそうですね、人となりとかは全然。

沖野そういうとこ聞いてもいい?(笑)せっかくなんで。

Moriもちろんもちろん。ありがとうございますー。

沖野プロフィールにも載ってるけど引きこもってたっていうのは公表してるんだよね?

Moriはい、全然大丈夫です。

沖野その引きこもってた小学5年生のころってどんな時代だろう?

MoriWindows95がまだ現役で動いていて、*Flash(フラッシュ)がまだ全盛期の頃です。

沖野Flashが1番イケてて面白いっていう時代ね。2000年前後かな?もう小学生からパソコンが身近な世代だよね。しかし時代の例えがパソコンのOSってのがやっぱ違う・・。(笑)

Moriあ、そうですね。それでBump Of Chikenのフラッシュがすごい流行ってて。

沖野うん??バンドのフラッシュ?

Mori曲がバーッと流れて、フラッシュを作るアニメーターの人たちがいて。曲にあわせて歌詞が流れたり。

沖野それがきっかけなんだよね?PVとかじゃなくて。

MoriYoutubeもまだなかったので、PVの存在とかも知らなかったですね。それでバンドも始めて。地元の公民館のギター教室通ったり。そこでの課題曲がNirvanaでした。(笑)

沖野そっかぁ、そこからAphex Twinとかにはどうやって繋がったの?

MoriやっぱYoutubeですね、中学生の頃はもうあったので。ニコニコ動画とかも友達に教えてもらったりして。それでちょっと厨二病みたいな(笑)周りとは違うよ、みたいな感じで聴いてて。

沖野エイフェックスでいうとどの辺?

Mori確か「Windowlicker」とかですかね。PVもすごくて。そこからもう急にいろんなとこ行っちゃって。Hiphopも聴いてみたりエレクトロもいってって感じでそこからグチャーっと。(笑)

Aphex Twin - Windowlicker


沖野なるほどなるほど。じゃあ中学からはもう普通に登校してたの?引きこもりの期間って聞いても良い?

Moriえーと、5年生から中2・・・あ、そのさっき言った公民館に行くぐらいまではもう本当に引きこもりでした。

沖野じゃあBump Of Chikenのおかげで外に出られるようになった感じなんだね。

Moriそうですねー、ギターやろうと思ってギター教室へ通い始めたので。おかげで外に出ることはキツくなくなった感じですかね。



オウテカって理路整然としてて、プログラムでジェネレイティブ・パッチ作って自動生成してって感じなんで。Mori
う、うん??沖野

沖野AphexとかAutecureとかWarp Records周辺にハマっていってからはもうコンピューターで制作しだしたのかな?

Moriパソコン行きつつヴィンテージ行きつつハイエンドの方も行きつつっていう感じで。バイトめちゃくちゃして。

沖野DAWの方は?

Mori最初はSonarで次がPro Tools、Logicいって今はAbleton Liveです。当初はCVとかでMidiに変換してヴィンテージマシン使ってたんですけど今はアプリ行っちゃいましたね。機材もほとんど売っちゃいました。

INDIANSUMMER島村沖野さんはアナログ機材はまだ持ってます?

沖野テスコの古~いシンセとかRolandのSH-2は小さいからまだ持ってるけど。そういえばそういう機材とかって独学したの?

Moriそうですね、シンセ丸わかり本みたいなものとかあとはやっぱサンレコですね。線を引いて、もう別冊でこう、辞書を自分で作るみたいな感じで。

沖野すごいねぇー。でも周りにそういう友達いた?地元に。

Mori全くいないですね。バンドメンバーがギリギリくらい。

沖野だよねー。エレクトロニカにはまってた頃は誰が1番好きだったの?

MoriAutecureですね。オウテカって理路整然としてて、プログラムでジェネレイティブ・パッチ作って自動生成してって感じなんで。

沖野う、うん??そういうとこなんだ??よくわかんないけど。(笑)

Moriそうですね、そこが音楽を凌駕してるっていうか。なんかすごい理論的に、数学的に捉えて良い曲作ってるところが。 なんか才能とかに左右されないんだみたいのがすごいなぁと思って。

沖野 う、うん???? ・・・・そういう情報ってどこから得てたの?

Moriえーと、日本の雑誌とか海外の雑誌を取り寄せて「*スーパーコライダーってなんだ?」みたいな。 あと*Max/MSPとかで作ってるってわかったので。

沖野???そのMax/MSPてのがよくわからないんだけど・・

Moriあ、Maxはプログラミング言語なんです。多分文字でバーってのは見慣れてると思うんですけどそういうのはスクリプト指向でMaxはオブジェクト指向って言ってこう、積み木みたいな感じで「これはこういう機能だよ」みたいなものがいっぱいあってその中でアイデアを具現化していくみたいな。

沖野ふ~~~~ん、そうか。(さっぱり理解できず・・汗)

Mori基盤に似てるかもです。あ、モジュラーシンセに1番近いかもしれません。

沖野なるほどねー(ってよくわかってませんが)・・・ということはリンくんは理数系なんだよね?

Moriいや、四則計算すらまともにできないっていう・・・・高校の先生とかに工学教えてもらってたんですけどなんか*フーリエ変換ってのができないとほとんど何もできないって話だったので、そこまで行くのにサイン、コサイン、タンジェント、何じゃこりゃみたいな・・結局諦めて。

沖野そうなんだ・・。面白いね。

Mori今思うと間違った入り口から入っちゃったなぁ、みたいな。

沖野でもまず最初は感覚的なものから入ったことは入ったんだよね?

Moriそうですね、全てが水の音のサンプルで作られている曲があって。ドラムもメロディーも。なんだこれは!?サンプリングとプログラミングが凄いなぁって。

沖野ふんふん、なるほどー。でDAWの方が最終的に*Ableton Liveに落ち着いた理由って?

MoriHip Hop始めてからですかね。

沖野*プレヒューズのインタビューの影響ってインタビューで言ってたよね?

Moriあ、そうですね。プレヒューズがインタビューの中でサンプリングっていうワードを出していて、なんだろうって?ところから掘っていって。で、ヒップホップは初めノトーリアス・B.I.G.から入って。

沖野それ知らないなぁ。

INDIANSUMMER島村90年代1番売れたヒップホップですよ。

Moriボビー・コールドウエルの「マイフレーム」ってマリンバがすごく印象的な曲をチョップしてヒップホップにしてる「Sky’s The Limit 」って曲があって。娘への想いを込めた感じの曲なんですけど、ここからどっぷりですね。

The Notorious B.I.G. Feat 112 - Sky's The Limit


沖野そうなんだー。Soundcloudへはいつ頃から曲をアップし始めたの?

Mori6、7年前ですかね。高校卒業してエレクトロニカもちょっとなぁ・・みたいになって。

沖野ヒップホップ好きになってすぐ?

Moriそうですね、でも最初つくり方わからなかったんでYoutube見てこう、*MPCがあるんだみたいな。とりあえず買ってレコード録るんだみたいな感じでやってみたんですけどなかなかうまくいかなくて。

MPC 2000 - Logic Beat Making Video

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