沖野俊太郎がソロとしては15年振りとなるアルバムを発売する。彼はヴィーナス・ペーターのボーカルとしてデビューしてから25年、これまでインディアン・ロープ、オーシャンそしてソロと様々なスタイルで時代ごとに数々の名曲を作ってきた。しかし残念なことにそれが多くの人に届いたとは言い難い。そこには本人の未熟さや、彼自身が抱えた問題による周囲との齟齬だけでなく、様々な誤解や行き違いも含め多くの理由があっただろう。そういう僕自身も何度か彼ときついやりとりをしたことがある。
今回こうしてインタビューというかたちで彼と話すことになったのは、僕がいまライブハウスを中心に活動している20代のバンドやレーベルなどをやっている若者たちと知り合ったことが大きなきっかけとなっている。
その姿はかつての自分たち、つまり1991年にワンダー・リリースを始めた頃の自分であったり、『ラブマリーン』を出した頃のヴィーナス・ペーターのような若者たちだった。
なかでも栃木を中心に活動しているCAR10がヴィーナス・ペーターに大きく反応してくれたことで、ひさしぶりに沖野くんに連絡をとることになった。その時にアルバムをレコーディングしていることを聞き、スタジオに彼を訪ねた。そこで聴くことができたほんの数曲から、これまでとは違う感触があった、と同時に彼の表情からもなにか変化があったことを感じることができた。
その後完成したアルバムを聴くことではっきりと彼自身がなにかを乗り越えたように思えた。
このインタビューはレーベル「インディアン・サマー」からの依頼で実現したものだが、いちファンとして話を聞くつもりが古くからの友人として、まるで対談のようなものになってしまった。その点はご容赦願いたい、その代わりに普通のインタビューでは聞くことのできないリアルな発言で構成されているはずだ。実際にはこの倍ぐらいの会話があったのだけれどそれはまた別の機会に。