沖野俊太郎 インタビュー
Shuntaro Okino Interview

与田(以下Y)
ヴィーナス・ペーターはある意味ピュアに求めすぎたが故に自分達のいる場所に耐えきれなくなって終わったような感覚があるんだけど、94年で解散してからはどういう流れがあったの?

トランス期。河口湖にて。

沖野(以下O)
やっぱりテクノ、トランス。レイブ時代があるじゃない。あれがすごく大きかったよね。
Y
あの時代のパーティー・カルチャーが俺の中でもそうとう大きな意味を占めてる。ずっと現場にいて20年くらいでしょ?そのシーンもEDMとかが出てきた事も含め、全然音楽として楽しめなくなった時に、やっぱり自分が聴いてきたロックだったりに帰っていくんだけど。
その時にちょうど今回の沖野くんのアルバムが完成して、いいと思った。ダンス・ビートももちろん入ってるけど、60年代の感じもあるし、もちろんパンクの感じもあるし。俺が好きだったヴィーナス・ペーターってこういう感じだったってみたいな曲ももちろんある。ほんと同じ世代には聴いて欲しいとは思うよ。
O
まあだから結局生き残った曲というか、今回の曲は。この15年の中で。生き残ったのが、こういう曲だった。他にも色んな曲あるし、とにかく。もっとダンス・ビートとかもインスト・アルバム出したいくらいあるし。でもやっぱ、とりあえずまず出すとしたら、これっていうのが残った。
Y
そういう意味では、俺たち90年代後半は踊りっぱなしだったわけじゃん。だから、アンダーワールド出てきた瞬間とか、そういう事も思い出せる流れがすごいなと思って。
O
あー、やっぱエッセンスには残ってるよね。すごく。トランスしていくものは好きなんだよね、ロックでもなんでも。それかメロディーか。
Y
でも2000年以降の感じも入ってるというか、ブルックリン周辺のテイストっていうか。
O
あの辺もそうだし、一応ピッチフォークとかネットでチェックして新譜とかもちゃんと聴いてるから。ずっと。
Y
この10年くらいの間ですごい好きだったアルバムなんかある?
O
アニマル・コレクティブの『メリーウェザー・ポスト・パビリオン』、あのアルバムはものすごい聴いた。
Y
イギリスのバンドはあんまり聴いてないの?
O
例えば?
Y
コールドプレイとか
O
コールドプレイはファーストしか。まあレディオヘッドとか普通に聴いてたよ、『キッド・エー』はだめだったけど『アムニージアック』は好き。
Y
例えばダンス・アルバムで、好きなアルバムはこれみたいなのある?
O
いっぱいあるよ、そりゃ。でもなんかね、最近忘れちゃった。
Y
例えばアンダーワールドのファーストとか、マッシブ・アタックのセカンドとか、そういう事だと思うんだけどね。多分今の20代にとっては90年代ですら、俺たちにとっての60年代と同じように伝説だから。
O
そうなんだよね、結局。ただなんか、俺が不安に思ってるのは今回のアルバムっていろんなものを昇華してるから、もうちょっと何かに特化してる方が若い人達にはわかりやすいのかなって。例えばアルバム全体でものすごくゴスとかパンクとか。
俺の好きなもの全部、今回わりと昇華できたなって感じはしてる。だから普通に聴こえんのかな、とか、どう聴こえるのかなっていうのはある。すごく普通にさらって聴かれちゃうのかなって。
Y
いろんなスタイルがあるけど、結局聴く人たちは沖野くんがやってきた事をふまえた上でまず入ってくると思うよ。その上で一本のガイドライン、線をひいてあげるとよりわかりやすいというか。
ビートルズ、ストーンズ、フー、キンクスがいて、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとドアーズがいて、デヴィッド・ボウイとT.REXがいて、んでまあこっち側からニューヨーク・パンクが始まり、クラッシュとピストルズがいて、スミスがきて、ストーン・ローゼズがきて、アンダーワールドとケミカル・ブラザーズが出てきて。っていうそのライン。
O
本当にそのまんま。
Y
それって意外にみんな感じてる事だと思うんだよね。だから20代のいまインディー系というかロックが好きって思ってる子達はまあ大体入り口はパンクなんだけど、音楽好きは絶対必ず60年代に立ち返るし、そこから遡ってくるとスミスもローゼズも聴かざるを得ないし。で絶対アンダーワールド、ケミカルブラザーズも無視出来ないと思う。
だからそういうのをリアルタイムで辿ってきたっていう部分は伝えた方が良いと思う。
O
そうだよね。
Y
沖野くんが好きなのはポップ・ミュージックだけど、セルアウトしたものではなくて、自分達の工夫で作り上げてきたバンドばっかりでしょ。だからその中の自分の好きなアルバムこれですって喜ばれると思う。
昔だったらアルバムが20枚くらい並べられても、全部買って聴くのか、って思うけど、いまはYoutubeで聴けるからね。
O
聴けるからね。アルバムもね。
Y
例えば「サンデー・モーニング」聴いて、オープニングのリフってこれなんだーって思ったり、デビッドボウイの『スペース・オディティー』や『ジギー・スターダスト』とかをまるまる聴いたら、これいいね、って話になると思うんだよ。で、そこから沖野くんの曲にまた戻った時に受け入れやすいっていうか。
O
また新鮮に聴こえるかもね。
Y
「ラブ・シック」聴いて、「ロック・ザ・カスバ」を知ってるのと知らないとじゃ聴こえ方が違うと思うんだよね。そのセレクションを並べた時に、この人こういうのが好きなんだなって。でもそれって、クリエイティブなロックンロール、って言い方変かも知れないけど、そういうのばっかりでしょ。伝えるためのガイドラインをひいてあげる、それあったほうが良いと思う。
O
なるほどね。
Y
もちろん40代の人たちはわかると思うんだけど、そうじゃない20代が聴く機会があったら、わかってもらえると思う。
O
レーベルのスタッフ話だと、若い子は意外とこういうのは今までなかったみたいに言ってくれてるって。この楽曲で日本の詞って斬新ですね、って感覚。サウンド完全に洋楽なのに、っていうね。
Y
自分達の生まれてきた時代のものしか聴かないで育ってきてる子の方が実際多い。
O
ホントそうだよね。
Y
自分がかつてそうであったように、時代をさかのぼって発見して、より好きになっていくでしょ音楽って。俺の周りのバンドやる若い子達はわりとそういう感じで。かつての自分たちのように。
やっぱりCAR10とかにヴィーナス・ペーターとか聴かせると、20年以上前にこんな事、日本でやってた人いるんですかって話になる。そこは入り口としてすごい大きくて。今回のアルバムを聴いた時にもっとこの人の事を知りたいと思うっていうきっかけにはなると思うし。
O
でもだから、遅れてるよね日本は。今やっと出てきたじゃん、やっと。いろいろ。これは邦楽じゃないな、っていう子達が。
Y
ヴィーナス・ペーターはほんとに孤立無援だったよね。
O
だからぽっかり抜けてるよね。20年。渋谷系って言われたけど、実は全然渋谷系じゃなかったしね。あのカテゴリーはシティー・ポップ的な感覚に近い。ああいうのは日本人が得意なんだとは思う。そういう意味ではヴィーナス・ペーターは散々いじめられた。なんで英語で歌ってんの、とかって。いまは当たり前のようにみんな歌ってるじゃん。
Y
そうだよね。
O
でもおれは逆に今度日本語でやってる。当時はなんでこんなに非難されるんだろうって思ってたよ。だって当たり前のようにやってたから。全然。でも、まあバブルだったし、みんな浮かれてた。
Y
本当に音楽が好きな人がそんなにいなかったっていう事なんだろうね。ヴィーナス・ペーターはこのまえのシングルはもう1年前?
O
そうだね。
Y
あのシングルの3曲目の、「スペース・オディティー」みたいな曲あるでしょ。あれとかホントにすごいよかったんだけど、もうやらないんだよね?しばらく。
O
ヴィーナス・ペーター?あれイシダくんの曲だしね。 部分的に沖野流コードに変えたりアレンジはしてるけど。
Y
あ!、そうなの?あれ沖野くんの曲じゃないんだ!
O
違うんだよ。あの曲すごいいいでしょ?イシダくんってね、てかヴィーナス・ペーターはみんなホントすごい、作曲センス。
Y
そうだよね。あれ、イシダさんの曲なんだ?イシダさんの曲と沖野くんホントに相性良いんだよね。そうだったんだ。すっかり沖野くんの曲だと思ってた。めちゃくちゃいい。ライブでは一度もやってないよね?
O
去年タワレコのインストアで演ったよ、確か。
Y
ライブは今回のアルバムからほぼ全部演奏出来る感じなってるの?
O
いや、まだ半分くらい。
Y
レコーディングのメンバーはどういう風に集めてたの?
O
プレクトラム知ってる?高田くんが副プロデューサーというか共同プロデューサーなんだけど、彼が人脈がすごい。ほぼ彼の人脈で。
それが大正解だった。みんな素晴らしかったよ。
Y
プレクトラムは90年代はポリスターからリリースしてたよね。ヴィーナス・ペーターの後の世代のギター・ポップだったよね。
O
いま聴くと凄くいいんだ。でも当時はダンス・ミュージックばかり聴いてたころだから知らなかったんだ。この前もGREAT3見に行ったんだけどさ、プレクトラムと一緒に出てたから。それでさ、GREAT3もおれ全然聴いてなくて、すげえかっこ良くてさ。当時はテクノやダンス・ミュージックばっかりだったから。
Y
俺も95年、6年はロック一切聴いてない。97年になってようやく「OK・コンピュター」とか「アーバン・ヒムズ」でまた聴き始めるけど。
O
2000年代与田さんはどんな感じだった?
Y
2000年くらいはもうダンス・ミュージック。イギリスのロック・バンドだとコールドプレイは3枚目までは好き。でもここ数年ではThe XXが一番良かった。それとアメリカのバンドではザ・ナショナル。
O
おれもThe XXはすごいハマった、特にファースト。聴くと、あーもう違う世代だなーっていうか、ジェネレーション・ギャップみたいな感じ。あと、日本人には出来ない感じがする。
日本のアーティストもすごい好きな人いるじゃん?与田さんもそういうとこあるよね。そういうの無い、おれは。
なんだかんだ言って皆実はBOOWYが好きだとか言うんだよ。
Y
俺はルースターズだけど。
O
当時聴いてれば好きになったかも知れないけど、知らなかった。
Y
洋楽と邦楽どっちも聴いてる身としては、例えばBOOWYとスミスは同時代だけど、どっちが好きかっていわれたらもちろんスミスだけどね。
でも沖野くん子供の頃歌謡曲好きだった訳じゃん?ヒットしてる流行ってるポップスっていう感覚で日本の音楽を聴き続けなかったんだよね?
沖野くんが好きな西城秀樹がオフコースの「眠れない夜」カバーしたじゃない?その時にオフコース聴いたりしなかった?
O
しなかった。与田さんはオフコースも好きだよね?なんだろうね、音楽に対して思い入れのある場所が違うというかね。
やぱりビートルズに出会ってから変わったと思う。やっぱり作曲というか、曲の方にすごくひかれるというか。 歌詞とかはあんまり昔から気にしてなかった。
Y
うまく時代の空気をまとめたポップ・ソングってあると思うんだけど、ヒットチャートに出なくても。はっぴぃえんどもそうだったし、フリッパーズの「ヘッド博士の世界塔」とかのあの世界観は俺たちの世代にとって他にいなかった感じもあると思うんだよね。
でもそういう風に聴いてなかったって事だよね。「ヘッド博士の世界塔」に入ってる「クイズマスター」は今聴いても歌詞がすごいなって思うもんね。
O
ずっと聴いてないな、ヘッド博士。今聴いてみたいな。小沢くんの歌詞ね。
そういえば小山田くんが今回のアルバムからリミックス1曲やってくれる予定なんだ。 リミックス・アルバムをつくろうかって思ってて。
Y
それ良さそうだね。小山田くんと一緒にやっていたヴィロードは短かい期間だったよね。
O
短い、1年くらい。ちょいちょい付き合いつつ。
Y
で沖野くんはニューヨークへ行き、小山田くんはロリポップ・ソニックからフリッパーズ。
O
俺がニューヨーク行ってる間にフリッパーズがデビューして、あれも大きかった。アルバム送ってきてくれて。 初めてちゃんと録音されたもの聴いたからすごいな!って思って、良く出来てたしね。
Y
俺もあんなスタイルの音楽を日本人が作れると思ってなかった。ちょうどホコ天とかイカ天ばっかりの時代だったから。

indian rope期。limboマスタリング時のロンドンにて。

O
そうそう!その辺はおれ知らなかったんだけど。ちょうど海外行ってたから。 やっぱり影響うけたって言ったらフリッパーズ、日本でね。あとやっぱ初期オリジナルラヴ、当時大きかったかなと思う。 やっぱオレも変なコードとか好きだから、当時のライブとかすごかったよ。
Y
話をアルバムに戻すけど、今回はミュージシャン沖野俊太郎として何かふっきれた印象があって、期待感も含めこれまでとは違った活動がスタートしそうに思えたんだけど、自分ではどう?
O
ふっきれたっていうか、なんだろう、プライドが無くなった、変な。音楽以外にプライドが無くなった。
Y
それ良い事だよね、それでわかる事多いでしょ。
O
「ウェルカム・トゥー・マイ・ワールド」が一番好きだって言ってくれたのは、それはどうして?
Y
一番ヴィーナス・ペーターを感じさせる曲だったから。俺にとってヴィーナス・ペーターはホントに特別なバンドなんだよね。
O
そうだね、ヴィナペ感あるもんね。
Y
そうそう。俺はある意味いちオーディエンスとしても、ラッキーなことに制作スタッフとしていろんな作品にかかわってこれたでしょ。やっぱりヴィーナス・ペーターの存在が特別なんだ。音楽的にもいろんな要素あるし、沖野くんの声と歌が好きだっていう事からスタートしてるし。同じ世代で、同じような音楽が好きだったていうこと、それにいっぱいある思い出も含めだけど。 だから俺にとっては「スウェイド」、「サマー・レイン」から「ウェルカム・トゥ・マイ・ワールド」までの3曲に凝縮されてる気がする。ロックの感じがね。
O
そうなんだ、「ウェルカム・トゥ・マイ・ワールド」と「サマー・レイン」が、オレの中でまだいけると思った2曲。あれが出来て日本語でこういう事表現出来るんだって。多分、日本語でがっかりした人も多いじゃん。おれが日本語でやってさ。
Y
『ビッグ・サッド・テーブル』のこと?
O
とかさ、多分その辺は今回クリア出来たというか。
Y
そうだね。なんの違和感も無かった。
O
これ良いけど、英語だったらもっとなーっていう感じじゃもう無いと思う。英語だったらなんか違っちゃうと思う。
Y
日本語、英語関係無しで全然普通に聴けたしね。オーシャンでやってたレコーディングされなかった曲ですごい良い曲があって。
O
どれだろう?けっこうあるんだよな。
Y
「アイ・メイ」ってオーシャンでやってた曲、YouTubeにライブがアップされてるんだけど、こういう曲をやって欲しいなって思ってたら、同じようなタッチで良い曲だと思ったのが「ウェルカム・トゥ・マイ・ワールド」。
O
あー、何となくわかった。あれはでも「m b v」、マイブラの最新作の影響ですぐ作った。あれすごい好きで。あれあんま好きじゃないの?
ケビンが「m b v」をあのタイミングで出したことが上手く言えないけど、自分ももうとにかくアウトプットしないとっていう背中を押してくれた感じなんだ。
意外かもしれないけど、俺「ラブレス」がそれほど好きじゃないんだよ。「イズント・エニシング」が好きで、次に好きなのが「m b v」。
ライドも初めのシングル3枚は好きで「ノーウエア」は持ってない。変わってるんだよね。よくわかんない自分の好み。
Y
え、じゃあ「ヴェイパー・トレイル」聴いてないってこと?
O
いや、もちろん知ってるけど与田さんみたいには好きじゃない。もちろん良いんだけど、当時のあれとしては残ってないんだよ、そんなに。俺ライドってそんなに思い入れは無いって最近気付いた。好きだけど、ローゼズとかプライマルと比べたら。
Y
わかる。沖野くんのセレクションって独特のラインだよね。
O
多分、あまりマニアックなものは好きじゃないし。
Y
もちろん普通に、メリー・チェインやマイブラみたいな大きなカテゴリーでは同じだけど、好きなアルバムが人と違うよね。スペースメン・スリーとかは好きでしょ?
O
すごい好き。
Y
そうだよね。そこの感覚が外人っぽいんだよね。日本人だとそこいかないだろうっていう所にいくよね。俺は典型的な日本人感覚でいくから不思議な感じするけどね。
 ジョンとポールはどっちが好き?
O
うーん、同じくらい。同じくらいの感じじゃない?俺の曲って。
Y
沖野くんはジョンのタイプだと思うけど、曲作りの上ではポール的な事も普通にやるからね。
O
そうそう。ものすごいポップ職人的な面もあるから。でもポップスはやりたくない、絶対。
Y
それはロックンロールが好きだからでしょ?
O
うん。でもソウルは好きだから、ソウル・ミュージックってポップスとつながるよね。あれを日本語に解釈してって。それは、、まあやって失敗したのもあるけど、でもオレのやる事じゃなかった。まあダサいけどロックにはこだわってるんだろうな、いわゆる日本人の言うロックじゃないけど。
Y
スペースメン・スリーの格好良さを、ポーズじゃなくて本当に理解してる感じはオレもわかる。ただ、ああいうたたずまいを愛してしまう感じは日本ではホントに伝わんないんだよね。
O
伝わんないね。でも例えばジェイソンなんて、ポップな曲も作るじゃん。ビーチ・ボーイズみたいな、ああいう感覚というか。
そういう事やる日本人いないよね。すごくポップ職人になっちゃうか、もっと極端にアバンギャルドだったり、ノイズの方いっちゃったり。そういうバランスの人が未だにいないよね。そこを評価してくれる人があんまりいないし。
Y
ファッション的なポーズでああいう見せ方する人は多かったけど、長続きしない。でもソニック・ブームもジェイソンもそれでずっとやってるからね。
O
だから未だに難しいとすごく思ってる、日本は。だけどすごくポップなメロディーも作れるから今回良いバランスだとは思ってるんだけどな。
Y
良いバランスだと思うよ。それは今までの沖野くんの音楽を知ってると尚更。でも今回は知らない人にも届けたいよね。
O
与田さんはキリキリヴィラの若いバンド達と接していてどんな感じ?
Y
25年前の俺たちと一緒。どこのレーベルの何が出て、あれがいいね、みたいなことばっかり話してる。
O
自分達の立場に対しては?状況に対しては?
Y
そこがはっきり違うんだよね。自分達のやりたい音楽をやるから、逆に月~金は仕事する。週末で自分の時間を作って、好きな音楽をやる。俺たちは時代的にもまだ音楽で何かできるかも、要するに売れたら、みたいな夢はあったけど、今の子達はそういう事考えてない。そこが多分一番違う。だけど自分達のやれる範囲内でやるから、好きな事をやめないで済むっていう風に思ってるんだよね。
O
冷静な感じするよね。
Y
そう、すごい冷静。でもそれは正しい冷静さっていうか、計算高いってことではないよ。良いことだと思う。
O
すごいね。やっぱ俺勘違いはしてたもん。
Y
いやいや、しょうがないよ。逆にいえば夢見ていたとも言えると思う。
O
こう言っちゃ悪いけど、周りも悪かったと思う。わりと何でもやっていいよ、みたいな感じあったじゃん。 俺が反省してるのは、自分の才能を過信しすぎてた。
Y
それなら俺だって「ラブマリーン」で日本のロックシーン全部ひっくり返ると思ったからね。それくらいすごいと思った。
O
でもインディー・チャートで1位になったよね。その前はXとかたまとかだったわけで。いきなりあれで変わったんだよ日本のインディー。
過小評価されてると思う。イカ天、ホコ天、ビジュアル系、関係なしに年間チャートで1位だし。
けど、その後は伸びなかったことに落ち込んだし、かなり反省した。だから昔の自分は好きじゃないよ。
Y
まあ俺もそうとうひどかったから、人のことは言えないけど。でも無軌道な若者が夢見て挫折するっていう物語としてはちょうど良かったのかな。本当に真剣だったのは事実だし。
O
だから俺全然うまくいかなかったけど、そういう方がおもしろい人生というか。
Y
あんなに楽しかったことないもん。
O
そうだね、で今もこうやってアルバム出せるなんてこんな幸せな事ない。ホント、しかも自分で妥協してないしすっきりしてるんだよ。いいわけも何にもないし。
次が楽しみ。この15年整理できてやっと次に進める、っていうね。
Y
でもここまで来たら、今回のアルバムが出ることによって、これまで沖野くんがやってきたことをちゃんと俯瞰して見るきっかけになると思うんだよね。これまでの意味は何だったのかって事を感じてくれる人が戻ってきたり、出てくると思う。そういう意味ではいいきっかけになるアルバムだし、ヴィーナス・ペーターのファンが聴いても良いと思えるし、ヴィーナス・ペーターを知らなかった人も入ってくることが出来るアルバムだと思うんだ。
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